社外取締役メッセージ
社外取締役 山本 ひとみ

就任から2年が経過し、この間、JR九州グループに対して抱いた印象は、経営陣が従業員を大切にしているということでした。就任1年目の株主総会後に、社長が従業員全員との対話を宣言し、現在ほぼ全員との対話が実現しています。社長自らが九州各地の職場に足を運び、従業員の声を聞きながら経営方針を丁寧に説明してきました。そういった率直な意見交換をする姿から従業員を大切に思っているということが伝わってきました。
一方、鉄道という運輸事業の特性から、従来の価値観に縛られやすい傾向があると感じています。変化の多い環境下では、経営層はもちろん、従業員一人ひとりが柔軟に対応し、新しい戦略を選択する意識改革が必要です。
私は客室乗務員を管轄する部署の責任者として長く従事してまいりましたので、安全とサービスに関しては当社グループと親和性が高い部分であり、これまでの知見を活かせるものと考えております。また、国内のみならずインバウンドも含めてという観点でのJR九州としてのブランド作りには助言できる部分が多くあると感じています。現在は、産学連携と地域創生に関わる仕事に携わっており、地域を元気にするまちづくりにも貢献できるものと考えています。
安全の状況報告がなされた際には、原因追究に関して確認や提言を行っています。特に、ハリーアップ症候群(時間に追われるあまり、注意力が散漫になったり、ストレスが溜まったりしている心の状態)が発生していないか確認し、基本手順を逸脱しがちになる場合には、組織全体の課題として対応を検討し、安全をつくることが重要です。事象を発生させた要因が安全をつくるための課題であり、それは必ずしもヒューマンエラーに起因するものとは限りません。作業環境に問題があれば、改善のために投資することが重要です。このような観点から、安全に関する監督機能を果たしてまいります。
人材戦略については、2年前の就任時から人事部門と意見交換を行い、個別の取り組みを体系的にまとめる必要性をアドバイスしました。昨年度、新しい人事制度が始動し、評価に値すると思います。人材戦略の実施において、従業員一人ひとりが意識と行動を変えることが重要です。マネジメント層が多様な価値観を尊重し、個々の能力を引き出すことで、DE&Iが実践され、強固な組織を築いていけると考えています。
次期中期経営計画の議論も進んでおり、目標達成のために必要なこと、企業価値創造の源泉は、やはり人材です。引き続きJR九州グループの持続的な価値創造に貢献するため、社外取締役としての役割を果たしていきたいと思います。
社外取締役 田中 卓

JR九州グループは目指す姿として「あるべき姿」を掲げ、この明快なビジョン・ミッションを社員がよく理解し動いており、鉄道を中心としたモビリティサービスを、地域の皆さまに提供するという目標に向かってよくまとまっている、そのような印象を抱いています。当社グループの社外取締役に就任するまでは、元々は国有鉄道であったということもあり、堅い組織なのかと思っていましたが、実際はまったく違っていました。新しいことにも果敢に挑戦するという社内の雰囲気があります。
一方、民間企業でありながら公益性の高い事業を行うことの難しさもあります。国鉄時代から続く地域の足としての機能を持つ以上、判断が難しい局面に直面することも多いです。こういった点を踏まえながらも、企業として持続的な収益をどのように確保していくのか、今後の課題として引き続き残るものだと感じています。
取締役会におけるシステム改修の議案に対しては、実現可能な計画になっているか、妥当な予算なのか、体制が整っているのかという観点での質問や助言をしています。自社におけるシステム関連費用を把握し、それが経費全体の中でどれほどの割合を占めているか、期待する効果が得られているかという視点も重要です。また、どのようなプロジェクトにおいても「絶対、大丈夫」ということはありません。外部環境が変われば常にリスクの大小も変化するため、適宜リスクサーベイを行うことによってリスクの大小を評価することも求められます。執行側に必要な要件が揃っているかどうか、その視点を持って監督する役割があると認識しています。
AIの進歩による業務の省力化や高度化が図られる中で、当社グループのDX推進の取り組みは担当部門だけにとどまらず、全社的にITリテラシーを向上させていくという良い取り組みであると評価しています。現場の社員がそれぞれの最適な仕事の進め方を自ら考え、現場の社員からアイデアが出てくる、さらに情報共有の仕組みを整えることで、組織全体の効率性を向上させる。こうした取り組みによって、当社グループは今後も変化に強い組織として成長を続け、さらなる競争力を高めることができると確信しています。
JR九州グループは、未来鉄道プロジェクトなどのワクワクする取り組みを通じて、大きな期待感を抱かせてくれます。こうした取り組みを通じて、活力を持って取り組む社員を一人でも増やしていく組織であってほしいと願っています。そのためにも、社外取締役としての役割を果たし、JR九州グループの持続的な発展に貢献してまいります。
社外取締役 小笠原 浩

就任当初からBtoB、BtoCビジネスそれぞれの特性上の違いを常に意識した助言をすることが大事だと考えています。私がこれまで携わってきたBtoBビジネスにおいては、競争原理が働く上に、グローバル競争下における地政学的リスクや買収リスクも無視できません。一方で、九州を基盤とした鉄道事業を祖業とする当社グループの事業環境とは、様々な点で異なります。このような違いを認識したうえで、専門知識や経験等のバックグラウンドを活かした助言に努めることで、取締役会の多様性を確保していくことに寄与できるものとも考えております。また、執行側の決定事項に対しては個別の事業内容ではなく、どのように策定されてきたのかというプロセスや、他社と比較した当社の立ち位置やベンチマークをどのように認識し設定しているのか確認し、それらに対する提言を行うことによって、社外取締役の監督機能としての役割を果たしてまいりたいと考えております。
人材戦略に関しては従業員のストレス軽減と働きがいのある会社作りの重要性を申しております。安川電機では、メンタルヘルス対策を実施できる体制を構築したことにより、休職者数の減少に効果が認められました。このような経験から従業員にとってストレス軽減と働きがいが大事であり、これらは生産性の向上に寄与するものと強く感じてきました。人材戦略に関しても知見を活かした助言に努めたいと思います。
現中期経営計画については最終年度において目標を達成する見込みであるという点は、これまで貪欲に挑戦し、チャンスをしっかりと掴んできた結果であると評価しています。他方で、コロナ前の水準に戻り回復軌道に乗せることはできたとは言えますが、営業利益はどうか、給与水準はどうかといった観点では厳しい評価になる部分もあると感じています。また、長期ビジョンで掲げている2030年6,000億円の営業収益を達成するためにはCAGR(年平均成長率)6%以上を継続的に達成する必要があります。通常の成長ペースでは相当に厳しい目標設定です。どのような企業をベンチマークとするのか、複数の企業を組み合わせてセグメントごとに複合的に考える必要があること、また、九州をターゲットとした場合の競合相手をどう捉えるのかという点について、執行側は充分に議論を深める必要があるということを提言しました。
JR九州グループは鉄道事業を主軸としながらも、果敢に多角経営を推し進めてきました。この独自の強みを活かし、持続的な価値を生み出すことが重要です。私も社外取締役として、ステークホルダーの皆さまの期待に応えるため、尽力してまいります。
新任社外取締役メッセージ
社外取締役 藤林 清隆

当社グループの特徴は、九州の交通インフラを担う公的側面を持ちながらも成長を求められる営利企業であるということだと受け止めています。九州のエリアとしての活性化・発展と当社グループの成長が正相関にある点が極めてユニークであります。地域に根差していることが経営の制約になることがあると同時に、「最も九州を知る会社」であることが事業展開上の最大の強みであります。この強みを武器にしてマーケットをどういう視点で捉え、どの方向に向かって戦っていくのか、九州内や国内外の個人・企業・自治体・大学など様々なステークホルダーを巻き込んでいく中でプロセスを構築していくことが重要だと認識しています。
社外取締役として、中核事業の一つである不動産事業領域において事業戦略の策定・実行に寄与していくことで期待に応えていくと同時に、ガバナンスの強化や企業文化の発展など当社グループの成長に貢献していきたいと考えています。
社外取締役 小澤 浩子

市場の変化に伴い、多くの企業にとって事業ポートフォリオの見直しが喫緊の課題となっている中、当社グループにおいては早期から積極的な事業の多角化が図られ、それが継続的な成長へとつながっていると感じます。また鉄道事業においても、人や物の移動という概念にとどまらない新たな付加価値を提供するサービスの創造にも成功しています。
事業やサービスの多様化においては同時に、これまでになかった多様な課題も出てきます。異なる業種にまたがるグループ企業のガバナンスや、グループ企業を束ねるブランディング、そして最も重要な課題の一つが、多様な知見を持つ人材の獲得と育成、多様な人材の活躍を可能とする環境、こうした課題を解決していくことがますます重要になると考えています。
私は社外取締役として、電機メーカーから事業領域を拡大した企業グループでの経営経験やブランドマネジメントの経験、業界団体等でのダイバーシティ推進活動を通じた人材育成の経験などを活かし、当社グループの企業価値向上に寄与していきたいと考えています。