自由時間手帖

JR九州

「自由時間手帖について」

美味しいもの、温泉、海、山、歴史遺跡、人懐っこい人々。
九州には、たくさんの魅力がある。
そして、旅人たちを優しく受け入れる懐の深さがある九州には、
旅人の数だけ、旅人たちに見せる表情があり、そんな旅人たちのストーリーにあふれている。
「自由時間手帖」は、そんな九州を旅した、書き手たちの旅のお話。
個性豊かな、九州の旅をお楽しみください。

嵐のあとの渓谷へ

嵐のあとの
渓谷へ

管啓次郎

「聖地か、ここは」

旅に選んだのは縁ある大分県・佐伯。
そこで詩人が見たものは……?

嵐のあとの渓谷へ

夏休みを取り損ねていた。大学の語学教師というと、授業がない期間はずっと休みだと思われがちだ。しかし授業がなければ休みというのは学生の話で、学部や図書館の業務はずっと続いているし、何より学期中はほとんど手がつけられない専門分野の論文書きなんかは、学期が終わったその瞬間から本格的にはじめるしかない。それで鈍い頭をごんごん壁にぶつけながら、どうにかこうにか英語の作文をかたちにしたころには、休みを1日もとらないままに8月が終わろうとしていた。

これでは精神に悪い。9月になってから旅に出ることにした。行ってみたいところはあった。大分県南部の佐伯市だ。

ぼくが幼児のころ最初に覚えた鉄道の路線名は「日豊本線」…

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管啓次郎

管啓次郎

1958年生まれ。詩人、批評家。明治大学理工学研究科「場所、芸術、意識」プログラム教授。読書と旅をめぐる批評的エッセーを多数発表。『斜線の旅』(インスクリプト)にて読売文学賞受賞。
『Agend'Ars』から『数と夕方』にいたる5冊の詩集は、中原中也賞、高見順賞、鮎川信夫賞、萩原朔太郎賞などの最終候補になっている。最新刊は英語詩集 Transit Blues (キャンベラ大学現代詩研究国際センター)。

私の、北九州周辺のこと

私の、北九州周辺のこと

牧野伊三夫

それもまた旅だなと思うのである

画家がこよなく愛する、
ノスタルジックな北部九州・鉄道の旅。

私の、北九州周辺のこと

時刻表 私の父は、高校を卒業すると、北九州市の小倉駅前にあった日本交通公社(現在のJTB)に就職して働きながら、市内にある大学の夜学に通った。本当は就職をせずに、もっとランクが上の大学へ通いたかったらしいが、家に金が無かった。行きたい大学に合格するだけの十分な学力はあったのだ、という話は、耳にタコができるくらい聞かされた。

会社では、大卒よりも待遇は良くなかったが、負けたくないと思っていたから、他の社員たちよりも早く出社をして、社内の机をふいてまわっていたらしい。ときは昭和三十年代、日本は高度経済成長の頃で景気は右肩上がり、会社は大忙しだった…

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牧野伊三夫

牧野伊三夫

1964年北九州市生まれ。画家。1987年多摩美術大学卒業後、広告制作会社サン・アドに就職。1992年、退社後、名曲喫茶でんえん(国分寺)、月光荘画材店(銀座)、HBギャラリー(原宿)等での個展を中心に画家としての活動を始める。1999年、美術同人誌『四月と十月』を創刊。第2回アトリエヌーボーコンペ日比野賞。2012、2013、2017年東京ADC賞。著書に『僕は、太陽をのむ』『仕事場訪問』(港の人)、『かぼちゃを塩で煮る』(幻冬舎)、21018年12月に、これまでの旅の連載をまとめたエッセイ集「画家のむだ歩き」(中央公論新社)を刊行予定。『雲のうえ』(北九州市)、『飛騨』(飛騨産業)編集委員。東京都在住。

本当にいた砂かけばばあ

本当にいた
砂かけばばあ

稲垣えみ子

「それこそが旅の本質なのだ。」

「一人旅が苦手」だったアフロえみ子を変えた、
32歳の鹿児島の旅。

本当にいた砂かけばばあ

旅というのは基本的に一人旅のことだと思っている。
なーんて偉そうなことを言っているが、以前は全くそんなふうには考えていなかった。というか、そもそも一人旅というものをしたことがなかった。
理由は簡単で、一人でどこかへ行っても、何が面白いんだか、そもそも何をしたらいいのかサッパリ分からなかったからだ。一体何を考えて、何を楽しんだらいいんですかね? もちろん名所旧跡を回ったり、土地の美味しいものを食べたりすることはできる。しかしそれも「すごいねー」とか「美味しいねー」とか、仲の良い誰かと言い合うから楽しいのだ。一人では何を見ても何を食べても「……だから?」という心の声に襲われることになる。だって実際のところ、世の中はそんなに素晴らしいモノやコトで溢れているわけじゃなくて…

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

1965年、愛知県生まれ。87年朝日新聞社入社。大阪社会部、週刊朝日編集部、論説委員などを経て、編集委員として「ザ・コラム」を担当。そこで綴った原発事故を契機とした超節電生活とアフロヘアで話題に。一昨年一月に早期退職し、定職につかず自由に楽しく閉じていく人生を模索中。著書に「魂の退社」「寂しい生活」(いずれも東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

本当にいた砂かけばばあ

九州で
心の岩戸が
開く旅

辛酸なめ子

一泊二日貪欲な九州癒やしの旅

辛酸なめ子がめぐる、
九州のパワースポット高千穂~天草紀行。

九州で心の岩戸が開く旅

東京での暮らしに疲れた時、ふと頭をよぎるのが「九州に行きたい……」という思い。「そうだ、九州行こう」的な衝動です。父方の祖父母や母方の先祖のお墓が九州にあったりして、私にとってルーツといってもいい第二の故郷であり、時々充電しに訪れたくなるパワースポットです。
これまで何十回も九州に行っていますが、まだ訪れたことがない秘境的な場所がありました。それは天孫降臨の地であると伝えられる高千穂と、世界遺産とイルカと潜伏キリシタンの聖地である天草です。九州の地図を眺めていたら、熊本を拠点にすれば両方行けるのではないかという思いが芽生え、今回、ちょっと貪欲なコースかとも思いながら一泊二日の癒しの旅をすることにしました。
早朝東京を出発し、熊本空港に到着…

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辛酸なめ子

辛酸なめ子

漫画家、コラムニスト。 埼玉県出身、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。 アイドル観察からスピリチュアルまで幅広く取材し、執筆。新刊は「魂活道場」(学研)、「ヌルラン」(太田出版)。

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