自由時間手帖

JR九州

作品を巡る

長崎へ、
『光』を観に行く

酒井順子

酒井順子

1966年東京生まれ。高校時代より雑誌「オリーブ」に寄稿し、大学卒業後、広告会社勤務を経てエッセイ執筆に専念。2003年に刊行した『負け犬の遠吠え』はべストセラーとなり、講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞。三十代以上・未婚・子ナシ女性を指す「負け犬」は流行語にもなった。他の著書に『枕草子REMIX』『都と京』『女流阿房列車』『紫式部の欲望』『ユーミンの罪』『地震と独身』『子の無い人生』など多数。

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れすとらん門

れすとらん門

創業1955年、レトロモダンな雰囲気の老舗洋食レストラン(本店は『博多和田門』)。佐世保名物「レモンステーキ」の元祖と言われる名店。一歩足を踏み入れると、肉汁とレモン汁が弾ける音と香りが店中に広がる。

「かつて銀座にあったステーキハウスには、『レモンステーキ』というメニューがありました。薄切りの牛肉をさっと炙り、特製のソースとたっぷりのレモン果汁で食すこの料理が私は大好きだったのですが、いつしかお店が、なくなってしまったのです。しかしそのステーキハウスの創業店『れすとらん門』があるのは、佐世保。『久しぶりにあの味を』と、勇躍やってきたのです。」

酒井順子『長崎へ、『光』を観に行く』(2019)

シーサイドライナー

シーサイドライナー

佐世保~長崎間を運行するJR九州の快速列車・区間快速列車。車窓には長崎県の内海大村湾が広がる。湾岸の絶景に似合うブルーの車体が印象的な列車。

「百閒先生に申し訳ないような気分になってきますが、私は景色を堪能すべく、進行方向右側の、海がよく見える席を確保しておりました。この日は曇天であり、西彼杵半島の山の姿は霞み気味ではありましたが、雲間からは神様が降臨してきそうな光が、海をドラマチックに照らしています。地元出身の方の話によると、大村湾が最もよく見ることができるのは、車窓からなのだそう。」

酒井順子『長崎へ、『光』を観に行く』(2019)

江山楼

江山楼

長崎に三店舗、テイクアウトショップ二店舗を経営する本格中華料理店(中国菜館)。「長崎ちゃんぽん」が有名。長崎中華街本店と長崎中華街新館は隣接しており、豪華絢爛で風情あふれる外観は中華街の観光地のひとつ。

「中華街の中の「江山楼」で食したちゃんぽんも皿うどんも、彩り鮮やか。そしてどちらもほの甘い味つけが、長崎風です。江戸時代は、長崎に荷揚げされた砂糖が、全国へと出荷されていました。長崎街道の別名は、「シュガーロード」。だからこそ長崎では、何でも甘めの味付けが多いのだそうです。
甘さは、旨さ。この甘さが「長崎に来た!」という感慨と満足感とを与えてくれるのでした。」

酒井順子『長崎へ、『光』を観に行く』(2019)

外海の出津集落

外海の出津集落

禁教期に小規模な潜伏キリシタンの信仰組織が連携し、聖画や教義書、教会暦などを密かに伝承し信仰を続けた潜伏キリシタンの集落。解禁後は、段階的にカトリックへ復帰し、マルコ・マリ・ド・ロ神父の指導により、出津教会堂が建設された。教会堂は2011年に国の重要文化財に指定されている。

「外海から見る海の碧さは、確かにただならぬものがありました。昨日眺めた大村湾とはまた違う、何かからこの地を隔てるような、深い碧さ。
背後には山が迫り、耕作地は少ない。目の前は、海。そんな貧しい地であった外海の出津という地に、明治12(1879)年にやって来たのが、フランス人のマルコ・マリ・ド・ロ神父です。」

酒井順子『長崎へ、『光』を観に行く』(2019)

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