自由時間手帖

JR九州

作品を巡る

宮崎・鹿児島の旅

久住昌之

久住昌之

1958年東京生れ。1981年、和泉晴紀と組んだ「泉昌之」としてマンガ家デビュー。同名で『かっこいいスキヤキ』『ダンドリくん』『食の軍師』等多数。1999年に実弟・久住卓也とのユニット「Q.B.B.」による『中学生日記』で、第45回文藝春秋漫画賞を受賞。『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)は世界10カ国で翻訳出版され、ドラマ化され現在season8。劇中音楽も制作。『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など、マンガ原作者として話題作を次々と発表する一方、エッセイストとしても活躍。『野武士のグルメ』『昼のセント酒』『ひとり家飲み通い呑み』『野武士、西へ 二年間の散歩』など多数の著書がある。2019年、自ら絵も手がけた絵本『大根はエライ』で第24回日本絵本賞を受賞。

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特急 「かわせみ やませみ」

青島神社

全島が熱帯・亜熱帯植物の群生地として、国の特別天然記念物に指定されている青島。
隆起海床と奇形波蝕痕として国の天然記念物に指定されている奇岩の「鬼の洗濯板」。
青島神社は、周囲1.5kmの青島の全島を境内地とし、
青島のほぼ真ん中に鎮座する神秘のスポット。

「青島は樹木が密。ぎっしりと緑が詰まっているように見える。その森を無理やりこじ開けるようにして、朱色の青島神社が建てられている。晴天だったので、青と朱と緑の対比がチカチカして非日常的。おみくじやお守りがいっぱい売ってる。「ジャングルトイレ」は超地味だった。
 この神社は奥の方がいいという。前回は行かなかった。拝殿の裏の方に回ると、外から島を見たときのあの鬱蒼とした密なジャングルの中に、白い砂の道が通り、実にエキゾチック。南海のSF映画みたいでワクワクする。」

久住昌之『宮崎・鹿児島の旅』(2019)

永国寺

特急 海幸山幸

海に山に、宮崎の魅力を味わうためにと登場した人気の
観光列車。海岸線を走っていたと思ったら、
緑濃い山間へと入り、列車名どおり変化にとんだ景色が楽しめる。
列車には現地の飫肥杉がふんだんに使われ、リゾート感たっぷり。

「ホームに海幸山幸がやってきた。クラシカルなシルエットの、白い2両編成ワンマン列車。サイドの壁は板張り。そんな電車初めてだ。これはカワイイ。
 乗り込む。満席。静かに和やか。指定席に行くために連結部を通ると、そこには暖簾がかかっていた。銭湯か。誰が考えたんだ。面白いじゃないか。」

久住昌之『宮崎・鹿児島の旅』(2019)

大観峰

八ちゃん食堂

宮崎県都城市、インターチェンジ近くの老舗定食屋。
メニューは麺、定食、丼とオールジャンル取り揃えられており、
一品料理も組み合わせ自由。
趣きのある店内は、笑顔が素敵な定員さんと威勢のよいお客さんで活気にあふれている。

「気を取り直し、前夜にそんなこともあるだろうと思って調べておいた『八ちゃん食堂』に行ってもらう。名前で決めた。
 そしたら、想像以上の店構えで、入る前から感動。看板も最高。市場の食堂に負けない。ラーメン・チャンポン・うどん・ごはん・焼肉、と書いてある。入口脇に金魚の水槽が並んでいるのも、ぐっとくる。
 入店。カウンター上の壁に貼られた手書きメニューの多さ。その文字。天井の扇風機。ああ、もうたまらない。ボクはこういう食堂が本当に好きなのだ。」

久住昌之『宮崎・鹿児島の旅』(2019)

鍋ケ滝

名山町スザク

建物は築70年。店内はレトロな雰囲気が魅力的。
1階では古着や骨董品を販売、2階昭和レトロな喫茶店な大人の空間。

「築70年の釣具屋を改装したという。約1年前オープンと知り驚いた。とてもそんな風に見えない。元の古い家を使っているからだろうが、一階で古着等を雑然と売ってることもあり、この形態でもう何十年か経ているように見える。昔と今が強引にヘンテコに溶け合ってる。靴を脱いで、スリッパで木の階段を上って二階の喫茶部へ。この空間がまた時代不明。ソファ、テーブル、灯り、どこから持ってきたんだ? というものばかり。大きなカラー市松模様の床も、軽く楳図かずおのマンガ的。
 でも妙に落ち着く。音楽が流れておらず、雨の音を聞きながらコーヒーをすすると、今がいつで、ここがどこなのかわからなくなってくる。」

久住昌之『宮崎・鹿児島の旅』(2019)

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